祖父の歩いた道

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先月、父方の祖父が突然亡くなり、
急遽、父方の実家のある福岡県北九州小倉へ。

斎場に着き、その一室。
祭壇の棺の中で気持ち良さそうに横になるじいちゃん。
いい顔してた。

昔、競輪選手だった祖父。
華やかな生活の裏に祖母には相当苦労を掛けたらしい。

それから、
じいちゃんはばあちゃんに心底感謝していたのか、
負い目を感じていたのか、
じいちゃんはなぜか全く怒らない人に。ばあちゃんにも、周りの人にも。
母方の沖縄の厳しかった祖父とは正反対。
特に僕なんか怒られたという記憶が全くない。
いつもニコニコ。
でも滑舌があんまり良くなかったので何を言ってるのかよくわからなかった。
初めての孫ということでとにかく可愛がられた。
じいちゃんが教えてくれた絵描き歌を今でもよく覚えているし、
今でも描ける。

そして、
とにかくビール好きだったじいちゃん。
特にキリンビール。
とにかくいつもキリンビールを飲んでいた。
その辺は僕もちゃんと受け継いでる。
僕もキリン派だ。

お通夜の夜、
祭壇に横たわるじいちゃんと線香に灯をともし続けながら、
じいちゃんにお供えしているビールと何度も何度も乾杯しながら、
僕もしこたまエビスビールとラガービールを呑んだ。
じいちゃんとの思い出に浸りながら。


僕がビールを飲めるようになってから、
じいちゃんの家のある小倉に里帰りする機会はかなり少なかったので、
じいちゃんとあまり杯を交わすことができなかったのが本当に本当に心残りだ。
ダカラコソ今日こそは!と思って、
口も目も開かないじいちゃんとつぶれるまで飲もうと思った。

案の定、
じいちゃんの目の前(祭壇の目の前)で座布団を枕にして、
記憶のないまま眠りについた。
要するにつぶれた。多分じいちゃん喜んでるはず(自己満足)
線香は多分消えてたはず...。力不足...。

翌日の僕は余裕で二日酔い。
死後の世界には二日酔いはないと信じたいが、じいちゃんも僕と同じく二日酔い(多分)

斎場で火葬する前に、
棺の中を花でいっぱいにする。
係の方に「じいちゃんビールが好きだったんで飲ませていいですか?」
とお願いすると、菊の葉にビールを浸して、口元につけてあげて下さいとのこと。
みんなで大好きだったキリンビールを口元にあげてお別れ。


骨になったじいちゃん。

しっかりしたきれいな骨だった。
心の中で「やるじゃんじいちゃん」って誇らしげだった。
のど仏もきれい。

でも、
最近骨折した際にボルトを入れていたので、
それがきれいに生々しく残っていたのが痛々しかった。
痛かったろうに。文句も痛いとも言わなかったみたい。

みんなで実家に帰り、
仏壇の横にじいちゃんの祭壇を作る。

手を合わせて、みんなで写真を撮ってお葬式は無事終わり。



その夜、
じいちゃんの祭壇のある部屋で一人就寝。

夜中、
ばあちゃんが僕の寝ている祭壇の部屋に入ってきた。

じいちゃんの遺影や祭壇を見て、
「あれ?じいちゃんなんでこんなことになってるの?」
「いつ死んじゃったの?」
「お葬式はしたの?」
「私は一人になっちゃうの?」

...。


そう言ってばあちゃんは泣き出してしまいました。

そうなんです。

ばあちゃんは痴呆症なんです。
いろんなことをすぐに忘れてしまう病気です。
もしかしたら、今回のじいちゃんの死の記憶も飛んでしまうのでは、
と構えてはいましたが...。

今回のことで一番哀しかった瞬間でした。

僕一人では収集がつかないので、
ばあちゃんの声を聞いて起きてきた母親にばあちゃんをお願いした。
母の包容力は偉大だと痛感。

翌日、昨日のことはなかったかのように、
じいちゃんの衣類やらなんやらかんやらを捨てまくるばあちゃん。
残しておいてもどうせ思い出すだけだからね。って。

恐るべしその切り替え力。

やるなぁばあちゃん。
しっかりしてる部分はまだまだ健在。
昔から、ばあちゃんのそういうところがたまらなく好きだった。

この日は、僕が東京に帰る日。
僕が帰るって分かった時のばあちゃんの反応が怖い。
泣いてしまわないか。
ばあちゃんの寂しそうな顔は見たくない。

でも、
ばあちゃんに「帰るね」と一言だけさらっと告げ、
ささっと別れた。
「わざわざ遠くからありがとう」って答えてくれた。

次回小倉に来る時はばあちゃん俺の顔見て「誰ですか?」
なんて言わないかな。
心配だ。

そして最後に仏壇の横のじいちゃんの祭壇へ。
手を合わせ、キリン一番搾りを供えて僕はお別れした。

だから僕はキリンビールを嫌いになることはない。
これからもずーっと。

ありがとう、じいちゃん。
大好きだった、じいちゃん。

あなたとビールを飲みにいくんだ。


カメラ:Nikon D300s
レンズ:Tokina ATX 12-24mm F4


追記

上の写真は小倉の実家(じいちゃんの家)をすぐ出たところ。
右に公園があり、
最近まで、その公園のベンチでひなたぼっこをする為に一人で歩いてた散歩のコース。

おそらく祖父の最後に歩いた道。

少し涙を流しながらファインダーを覗いていた。

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そしてその公園。
あのベンチに腰掛けていたはず。

僕は幼い頃からこの写真と同じ景色をよく夢に見る。
なんなんだろう。


カメラ:Nikon D300s
レンズ:Tokina ATX 12-24mm F4
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by sakura-kimura | 2011-08-03 12:51 |
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